木の話

5.駒
 駒は厚さ3〜3.5p、幅3pの楓でできています。その働きは
  1. 響板を振動させる駆動点である。
  2. 取付位置によって有効弦長が決定される。
  3. 弦の下圧力を分散させる
  4. 弦を駒ピンで保持する。
  5. 高音部では駒自体が振動体である。

 ことなどです。駒に適した条件は、駒釘を十分保持できる硬木であること、振動伝達が良いことです。
響板に対しての位置関係は、響板の振動特性を考慮して端に近すぎてもいけません。

駒の方向は響板の木目と平行にします。

また駒の厚さは張力がかかった状態で、中音から高音までアリコートブリッジから1oの高さにならなくてはなりません。

 駒の厚さはクラウン、弦圧に深く関係しています。

T = T1 x sin(θ+θ' /2)  T=弦圧 T1=張力 θ=駒からアッパーブリッジまでの角度 θ'=アグラフから駒までの角度

θの角度が大きいと駒圧が高く、将来的にクラウンが低下して駒下がりの状態になります。駒下がりになると音が伸びなくなり場合によっては雑音を発生します。
一般的にはθの角度が小さいピアノのほうが多く見受けられます。駒圧が高いより低いほうがベターなのでしょう。駒圧は以下の式により算出します。

K = T x h /I K = 駒圧 T = 張力 l = 駒ピンから弦枕までの長さ(ヒッチピンまで) h = 弦を駒から延長してヒッチピンでの高さ

 

6.ピン板
 ピン板は圧さ8〜9oの楓材を木目方向を縦横交互に貼合わせてできてます。220〜230本のチューニングピンで約20トンの張力を支えますので頑丈でなければなりません。従って、一般的にはピン板の変形を防ぐために全体を鋳物のフレームで覆い、フレームにチューニングピンが通る広さの穴を開けて打込んであります。

一般的な方式

 弦振動がチューニングピンを通してフレームに伝わると共鳴雑音が発生します。そこでベッヒシュタイン、ベーゼンドルファーはピン板がむき出しの状態になっています。

ベーゼンドルファー・ベッヒシュタイン方式

スタンウェイはフレームからピンブッシュだけを取り除いています。

スタンウェイ方式

従って、ベッヒシュタイン、ベーゼンドルファーはピン板の強度や変形に自信があると同時に音質優先であるのです。