ピアノの仕組みを知ろう!

3.惰性でハンマーが動き出す時
 鍵盤、及びウィペンによって加速されたハンマーはジャックの脱進後も惰性によって運動します。もし、ジャックが脱進せずハンマーを弦に接触するまでハンマーを持ち上げていたらどうなるでしょう?ジャックはハンマーが打弦した後もハンマーを持ち上げているのでハンマーは弦から離れず、音は出ません。
 
従って、ジャックの脱進はピアノアクションにとって重要な運動であります。グランドピアノはシャンクフレンジセンターピンからハンマーの打弦点までの距離をとすると、ジャックがシャンクローラーと接触するまでの距離がになります。
アップライトピアノはバットの形状から、バットフレンジセンターピンからハンマーの打弦点までの距離を1とすると、ジャックがバットスキンと接触するまでの距離が始動時は1/10、終息時は1/6になります。
アップライトピアノ
グランドピアノ

以上の比率をまとめて、鍵盤が秒速1mで等速度運動していると仮定すると、

機種 鍵盤比率 サポート比率 ハンマー比率 合計比率 ハンマー速度
アップライトピアノ 2/3 3/2 6/1 6.00 6.0(m/s)
グランドピアノ 1/2 3/2 8/1 6.00 6.0(m/s)

と、なります。従って、打弦距離46m/mにハンマーが到達する時間は

   0.046(m) ÷ 6(m/s) = 0.00766秒

鍵盤が底に着く時間は
   10(m/s) ÷ 1000 = 0.01秒
になります。ハンマーの運動速度は音量に関係しますので、大きい音を出そうとするとそれだけ速く鍵盤を動作させなければなりません。

 実際はグランドピアノでフォルテの演奏レベルはハンマーの最終加速度が秒速約5mになり、それ以上の速度でハンマーが運動する場合はジャックがローラースキンを押しつぶして、ハンマー比率が変化してハンマー速度は鍵盤に対して6倍以上で動作します。

4.打弦時
 弦とハンマーが接触すると打弦点で波を発生します。発生した波は打弦点から駒やベアリングに向かって往復します。その後、ハンマーが弦から離れると波は駒からペアリングの間を往復します。この時の1秒間の振動回数が周波数になります。
テーラーの公式

f=振動数 L=弦長 T=張力 ρ=線密度(弦の断面積)

 上記の公式から弦長が長くなれば振動数は小さく(音程は低く)なり、張力が弱ければ振動数は小さく(音程は低く)なり、
線密度が小さくなれば振動数は小さく(音程は低く)なることがわかります。
弦の振動

弦振動の図

 ハンマーは惰性で弦に接触した後、そのまま弦を押します。そしてハンマーに押されてコブのように弦は変形します。低・中音では弦長の1/8、次高音では1/16、最高音では1/20の場所を打弦点とします。これは高音では倍音特性よりも音色を重視するためです。

 図で下からハンマーが弦を押し上げてできたコブは駒の位置まで伝わり、位相が反転して打弦点へ戻ってきます。そのコブによってハンマーは押し戻されるのです。
その時間つまり、ハンマーと弦の接触時間は低音では4m/s(千分の4秒)、中音で1m/s、最高音で0.3m/sになります。

 このコブ(振動)は左右の駒を行き来して振動を繰り返し、やがて減衰します。
弦の振動はこれだけではなく、この振動が複雑に重なって基音、2倍音、3倍音と多くの倍音(実際のは6倍音くらいまで)が発生します。

 ピアノの場合、4倍音が重要になるため4倍音の節となる1/8のところに打弦点があります。